RAKIA GAMES / BLOG
← BACK TO BLOG
DEV 2026.05.19 // 03 / 04

Cubia Easy 難易度の設計記録
— 「優しさ」は「弱さ」ではない

Cubia の最低難易度「Easy」の設計過程を記録します。前回の Hell 難易度の設計記録 と対をなす内容です。協力的な AI を設計するためには、敵対的な AI と同等の設計努力が必要だったという、開発過程での発見を解説します。

個人視点版: note.com/rakia007「優しいAIは、弱いAIではない」

初期仕様: 100% 最善の選択

Easy 難易度の初期仕様は、Hell の対称形として設計されました。Hell が「最も困らせる」ピースを選択するならば、Easy は「最も助かる」ピースを 100% の確率で選択するという方針です。プレイヤーが消しやすいピースを常に提供することで、落ち物パズルに不慣れなユーザーでも快適にプレイできる体験を目指しました。

この仕様で実際にプレイテストを行ったところ、致命的な問題が判明しました。プレイヤーが思考する必要性が消失するという現象です。次のピースが常に最適であるため、配置を深く考える動機が生まれず、手だけを動かしていれば自動的にラインが消える状態となりました。結果として、5 分程度のプレイで体験としての魅力が失われる、退屈な実装となってしまいました。

代替案検証: 純ランダムも不適切

次に検証したのは、Easy 難易度のみ AI による選択を停止し、純粋なランダム供給に切り替えるアプローチです。これも採用には至りませんでした。

Cubia は「AI が次のピースを選ぶ」というコンセプトを全難易度で一貫して提供することを設計原則としています。Easy だけ AI が機能しない仕様は、ゲーム全体の一貫性を損ないます。AI が介入するゲームにおいて、純ランダムは「AI が役割を果たしていない」状態であり、コンセプトとして成立しないという結論に至りました。

Easy であっても、AI が「優しさの方向」に介入している状態を維持する必要がある、という設計要件が明確になりました。

採用仕様: 60/40 のバランス

複数のバランス検証を経て、Easy 難易度の最終仕様は「最善ピース 60% / ランダム 40%」の比率に決定しました。AI は基本的にプレイヤーが消しやすいピースを選択しますが、40% の確率で意図的に最適解から外れる挙動を取ります。

この余白の導入が決定的でした。完全に最適だと退屈、完全にランダムだと無味乾燥。中間値を取ることで、プレイヤーが「次に何が来るか」「どこに置くべきか」を能動的に考える余地が生まれます。Easy であってもプレイヤーの思考が誘発される、健全な体験が成立する仕様となりました。

共通制約: 「2 連続まで」

Hell 難易度の調整過程で導入した「3 連続禁止」制約に類するルールを、Easy にも適用しています。具体的には Easy と Hell の両難易度に 「同一ピースは最大 2 連続まで」 という制約を実装しています。

この制約は難易度バランスではなく、ゲーム全体の体験品質を担保するためのものです。Easy 難易度においても、同じピースが連続して 5 個以上降ってくる事象が発生すると、プレイヤーは「AI が機能していないのではないか」「見捨てられている」という印象を持ちます。両難易度で共通の制約を設けることで、最低限の体験品質を保証しています。

難易度別パラメータ

Easy 難易度には、AI の挙動とは独立した難易度設定も適用しています。

これらは「プレイヤーとの契約」として位置づけられる仕様です。Easy 難易度はゆっくり考える時間を保証する代わり、スコア面では他難易度に対して不利となる設計です。難易度ごとのスコア倍率の差は、上位難易度に挑戦する動機を提供する役割も担っています。

設計上の結論

Easy 難易度の設計過程を通して得られた最も重要な結論は、「弱い AI を作る」ことと「優しい AI を作る」ことは別の設計課題であるという認識です。AI を単純に弱体化させる手法では、ゲームとしての体験は成立しません。優しい AI の設計には、敵対的な AI と同等か、それ以上の設計努力が必要です。

Cubia の 5 段階難易度は、Easy と Hell の両端がそれぞれ独立した設計課題として成立していることで、中間の Normal / Hard / Master の階段にも意味が生まれます。この設計原則は、今後の追加難易度や新規プロダクトにも継承していく方針です。